地産地消のジビエ料理

愛知県産ジビエ普及のためのジビエ料理試食会へ行ってきました。この上の写真はシカ?イノシシ? ちょっと驚きの食材、「カラス」も登場! 自然のめぐみと考え、「活かす」取り組みが進められています。

食肉として有効活用

全国の里山で問題視されている野生鳥獣による耕作地の被害。有害獣による日本全体の農作物の被害額は約176億円(平成27年度、農林水産省調査より)、愛知県では約4.3億円(同年、愛知県調べ)と報告されています。野生鳥獣とは、イノシシやニホンジカなど、鳥類としては、ヒヨドリやスズメ、カラスなどをいいます。

せっかく育った農作物が被害に遭わないよう、里山の農家は周囲に柵を張り巡らしたり、罠を仕掛けたりとあれこれ対策をするほか、鳥獣を捕獲するなどしてきましたが、その多くは埋設または焼却処分されているのが現状。シカやイノシシなどを処理できる食肉加工施設、担い手が少ないこと、ジビエは家畜と違い個体差が大きく、品質が均一でないことなどを理由に、食肉としての消費拡大には広がっていないのが実態です。

その問題を広く知ってもらい、食肉として有効活用する仕組みをつくろうと開かれたのが今回の試食会。会場となった「アイリス愛知」の久永誠料理長ら一流のシェフが腕を振るったジビエ料理約20種が振る舞われました。

「野生鳥獣による被害は広がっています。ジビエとどう向き合うかを考えていかなければいけない」と、ジビエの有効活用の促進に携わってきた、名古屋のNPO法人ボランタリーネイバーズ代表理事の大西光男さんは話します。

 

シカ、イノシシ、カラス!

上の写真は「鹿肉のワイルドレッグのロースト」。長さ80cm超えのシカの脚に、豚の背油とニンニクを鹿肉に差し込んで焼き上げたもの。その場で切り分けてサーブされました。食感はローストビーフよりもやや淡泊ですが、香辛料が効いていておいしくいただきました。


鹿肉の上に燻製豆腐を添えた「里芋のテリーヌの上にのった柔らかい鹿肉のミュスカド風味」。口の中でチーズのような燻製豆腐が全体をまとめてくれるので、鹿肉のたんぱくな印象はやわらぎます。

今回の目玉料理の「カラス」。ジビエの代表的な食材はシカやイノシシですが、今回は特別に設楽産のカラスを使った料理も用意されました。ハシボソガラスという里山に暮らすカラスで、「フリットとプロシュートのデュオ」(写真右)、「カラス胸肉の蜂蜜焼きに燻製豆腐 実山椒風味」(中央)、「カラスのサテ マレーシア風串焼き」(写真外)の3品。

フランス料理では使われることもある食材だそうですが、日本の街中の黒いカラスを想像すると、少し食べるのをためらってしまいますよね。気の利いたコメントではありませんが、食べた感想としては「硬めの鶏肉」。しっかり味付けされていたので想像していた臭みやクセはありませんでした。久永料理長もかなり苦戦した食材だったそうです。

カラスの食品成分データは残念ながら見つかりませんでしたが、イノシシは豚肉と比べて鉄分豊富、シカ肉は野山を駆け巡っただけあり筋肉質なので低脂肪、高たんぱく。アスリート用の食材として、また健康志向な人を中心に関心が広まることが期待されています。

 

「狩ガール」の意見は…

この試食会には、豊田市足助を拠点に狩猟をしている「狩ガール」清水潤子さん(写真左)も来場。狩猟を始めたのは3年前で、たまたま訪れた足助の田んぼにイノシシが現れ、地元のおじいさんに「なんとかしてくれ」と頼まれたことがきっかけだったそう。

清水さんは新潟県長岡市の山間地出身で、イノシシなどを見てもそう驚くことはなかったこと、またご主人と共に「資格ゲッター」で、この出来事をきっかけに「狩猟免許を取ろう」という動きになり、本物のハンターになりました。

「昨年足助に【山恵】(やまけい)という食肉処理場が誕生したことで、流れが変わりましたね。これまでは狩猟をしても埋めるしかできなかったが、食肉として少しずつですが流通させることができるようになった。最初に頼まれた時は驚きと同時に、地元の人間ではない私に頼むほど深刻な問題なのだと痛感。少しでもこの問題改善の役に立てることがあれば、今はそんな気持ちで携わっています」と清水さん。

愛知産ジビエ普及のためのネットワークづくりに関する意見懇談会を12月7日(木)モリコロパークで開催予定。関心のある人は一度参加してみては。詳細はNPO法人「ボランタリーネイバーズ」のホームページから。

 


●取材協力/
NPO法人ボランタリーネイバーズ
http://www.vns.or.jp/