あいちトリエンナーレ2019「情の時代」

今月1日「あいちトリエンナーレ2019」が開幕しました。国内外から90組以上のアーティストが参加する国内最大規模の国際芸術祭で、2010年より3年に一度行われています。

 

今回のテーマは「情の時代」。「感情」「情報」「情け」をモチーフにした作品が多く並んでいます。直感に訴えかけるアートを体感してみませんか?

 

「あいちトリエンナーレ2019」の概要

今回の会場は、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋市西区の四間道・円頓寺(しけみち・えんどうじ)、そして豊田市美術館・豊田市駅周辺の4つのエリアです。会期は、10月14日(月・祝)までの75日間。国際現代美術展のほか、映像プログラム、パフォーミングアーツ、音楽プログラムなども実施されます。

 

◆国際現代美術展

国内外の66組のアーティスト・団体の作品を展示し、最先端の現代美術を紹介。

※一部、展示を中止、変更した作品があります

 

◆映像プログラム

国内外のアーティスト・団体14組による映画作品15本(日本初上映作品3本、新作1本を含む)を、9月15日(日)~29日(日)にかけて愛知芸術文化センターアートスペースAで上映。

 

◆パフォーミングアーツ

国内外の先鋭的な演劇などの作品を、愛知県芸術劇場を中心に名古屋市内及び豊田市内で14演目上演。

 

◆音楽プログラム

ロックやポップスなどポピュラーミュージックを、ライブなどを通して魅力を伝える企画。9月15日(日)、16日(月・祝)には、純烈Presents「1969年の前川清と藤圭子~昭和を彩るロックとブルース~」のプログラムも。

 

では、名古屋市内の主な3つの会場の注目作品をピックアップして紹介します。

 

愛知芸術文化センター

最も多くの作品が集まるメイン会場。地下2階、2階、8階と10階に展示されています。

 


ウーゴ・ロンディノーネ≪孤独のボキャブラリー≫2016

会場10階にあるこちらの作品は、ウーゴ・ロンディノーネの≪孤独のボキャブラリー≫(2016)です。大きな展示室にサイケデリックな衣装をまとったピエロたちが、夢を見る/おならをする/お願いする/嘘をつくなど、一人の人間が24時間の内に行う45のふるまいを表しています。彼らの表情やたたずまいから何が読み取れるでしょうか。並んで同じポーズをしてみたり、「自分と似ているピエロはどれかな?」といった視点で鑑賞しても面白いですね。

 

 


dividual inc. ≪Last Words/Type Trace≫ 2019

東京を拠点に活動するdividual inc.の≪Last Words/Type Trace≫(2019)は、一般の人から投稿された「10分間で書かれた遺言」をタイピングする際の「筆跡」を可視化し、24台のモニターに映し出す作品です。明日、自分がこの世を去ることを想定しながら、大切に思う一人に向けて書かれた「最後の言葉」。その言葉からは“何を大切に生きているのか”という人それぞれの価値観が浮かび上がり、まさに感情を揺さぶられる展示です。

 

作品を観賞するだけでなく、来場者が「あそぶ」「はなす」「つくる」など体験を通して創造性を発揮できる「ラーニングプログラム」も充実しています。

 

その一つが、同会場8階にある「アート・プレイグラウンド あそぶ PLAY」です。建築家の遠藤幹子、現代美術作家の日比野克彦とともに、愛知県内の小学校の児童が作った「ダンボールの公園」が広がっています。ここではすべり台や工作など自由に遊ぶことができ、訪れた人も手を動かし、作品を作りながら、この公園の様子を変えることができます。

こちらは、トリエンナーレのパスが無くても入場可能。45分間の時間制で、入場には当日配布の整理券が必要です。子どもたちと訪れて、自由な発想を引き出してみませんか。

 

名古屋市美術館

伏見駅から徒歩8分。緑豊かな白川公園内に位置する名古屋市美術館では、メキシコを拠点とするフェミニスト・アートのパイオニア、モニカ・メイヤーの参加型プロジェクト≪The Clothesline≫(2019)に注目が集まっていました。1978年以降、女性に対する暴力をテーマにしたプロジェクトで、6月には名古屋大学で公開レクチャーとワークショップも行われましたが、現在は当初の内容と変更し、展示されています。

 


碓井ゆい ≪ガラスの中で≫(2019)

同会場に展示されているのは、日本社会で生きる一人の女性として、近代から現代に至る「女性の立ち位置」を問うオブジェやインスタレーションを作る碓井(うすい)ゆいの≪ガラスの中で≫(2019)です。天井から吊るされたアクリル枠の中に、オーガンジーの布に刺しゅうを施した愛らしい作品ですが、モチーフをひも解くとジェンダーの不均等さを突いたメッセージを投げかけています。

現代の課題として取り上げられることが多い「ジェンダー問題」ですが、今回のトリエンナーレでは参加アーティストのうち半数が女性で、ジェンダー平等が実現されました。これは、国内で開かれる国際美術展では珍しいことです。女性アーティストの作品が訴えるメッセージに、耳を傾けてみては。

 

四間道・円頓寺

前回までのあいちトリエンナーレでは、伏見・長者町繊維街で展示が行われていましたが、今回は四間道と円頓寺エリアが会場になりました。歴史的建造物や商店街の一角に作品が点在しています。


鷲尾友公 ≪MISSING PIECE≫(2019)

地名の由来である長久山円頓寺には、愛知県を拠点に活動する鷲尾友公(わしおともゆき)が描き下ろした壁画作品が。壁画前にはステージが組まれ、毎週末さまざまなアーティストが演奏する「円頓寺デイリーライブ」が行われています。

 

あいちトリエンナーレの会期は、10月14日(月・祝)まで。「現代美術って難しそう…」と思っている人でも、構えることなく楽しめる作品がたくさんあります。実際に訪れて、自分がどう感じるのかを体感してみてください。

 


▼あいちトリエンナーレ2019

会期/8月1日(木)~10月14日(月・祝)

主な会場/愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、四間道・円頓寺、豊田市美術館及び豊田市駅周辺

チケット/1DAYパス 一般1,600円、大学生1,200円、高校生600円
フリーパス(会期中、各会場を何回でも観賞可) 一般3,000円、大学生2,300円、高校生1,100円

※パフォーミングアーツや音楽プログラムなど別途料金が必要な公演も

 

▼あいちトリエンナーレ2019公式サイト
http://aichitriennale.jp/