日本社会の在り方とは? 巨匠 神山征二郎監督 映画『時の行路』

『ハチ公物語』『遠き落日』などで知られる日本映画界の巨匠、神山(こうやま)征二郎監督の第30回作品『時の行路(ときのこうろ)』が8月15日(土)、名演小劇場で公開となります。

日本社会はこれでいいのか?非正規切りされた一家の物語を軸に、働く者の権利を主張して闘う意味、格差と貧困にあえぐ日本社会の在り方を問い掛けています。

 

日本社会はこれでいいのか

『時の行路』の原作は、田島一による小説。リーマンショックによって引き起こされた派遣切りの実話を基にしています。

映画のあらすじをみてみましょう。リストラにあった五味洋介(石黒賢)は、妻の夏美(中山忍)と子どもたちを青森の実家に残して、静岡の大手自動車メーカーの旋盤工として働くことに。派遣社員でありながらも、ベテラン技能者として職場でも信頼される洋介。充実した日々を送りながら、家族と一緒に静岡で暮らせる未来を夢見て頑張っていました。

しかし、リーマンショックに端を発した非正規労働者の大量首切りによって洋介は職場を追い出されてしまいます。理不尽な仕打ちに抗い、仲間と労働組合で闘いますが、洋介や妻たちの願いは届きません。会社と裁判所は冷酷そのものでした。そんな折、闘病中の夏美が倒れたという知らせを受け、洋介は郷里へ向かい…。

 

 

6年ぶりの映画づくり


神山征二郎監督

映画監督として60年のキャリアを持つ神山監督。6年ぶりに『時の行路』を撮影することになりました。

 

神山監督は、日本大学芸術学部映画学科を中退後、1963年に新藤兼人監督が主宰する「近代映画協会」に参加。新藤監督らの助手を務めた後、1971年に監督デビュー。60年近く映画づくりに携わってきた神山監督は「映画で大切なのは、1にシナリオ、2に役者。監督は良い脚本と役者を見極め、方針を出してリアリティをチェックしていく地道な仕事。主演の石黒賢さん、その妻を演じた中山忍さん、映画に参加してくれたみんなありがとう」と感謝しています。

 

心の糧となる映画に

『時の行路』を撮ろうと思ったのは11年前。2008年のリーマンショックで一気に不況になり、派遣切りが社会問題となっていた時でした。

「私たちが生きている日本は、一見栄えていて悪くないようにみえるけれど、どこか病んでいる、止まっているという感じがしてならないんです」と話す神山監督。「夫婦の愛情と苦しみに焦点を合わせて、今生きている時代のことを観客がごく自然に感じとれるような映画にしたいと思ってつくりました。世界中で、いや私たちの足元で巨大な危機が渦巻いています。そんな時代を生きている私たちの、しかし希望は失わないぞ、という心の糧となる映画になってくれれば」と期待しています。

また、神山監督は、最近の日本について「才能のある若い人を生かすのが会社。最近は日本にそのシステムが欠落してきているような気がします。たった数十年経つか経たないかの間に、韓国や中国には映画でも経済でもずいぶんと差を付けられましたね。恐ろしいものだなと思います」と危機感をあらわに。

社会と人間を深く見つめ続け描かれた『時の行路』は、生きる勇気を与えてくれる作品です。お逃しなく!

 

▼『時の行路』について詳しくはこちら。
http://www.tokinokouro.kyodo-eiga.co.jp/

 

▼名演小劇場(名古屋市東区東桜2-23-7)
TEL/052-931-1701
URL/http://meien.movie.coocan.jp/

 

<プロフィール>

神山征二郎(こうやま・せいじろう)

1941年岐阜県生まれ。63年より近代映画協会に参加し、新藤兼人、吉村幸三郎、今井正監督らに師事。71年『鯉のいる村』で監督デビュー。以後、日本の風土に根差したヒューマニズムあふれる作品を発表し続けています。 『ふるさと』(83年) 『ハチ公物語』(87年)『月光の夏』(93年)『郡上一揆』(2000年)などヒット作多数。

 


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