“寺活”のススメ(後編)

先週配信の前編に引き続き、今週も「寺の取り組み」を2軒紹介。お灸教室・寺ヨガを始め、子どもの支援に努める中区の「久遠寺」と、お香講座や精進モーニングを開催する中村区の「願隆寺」です。

 

中区・久遠寺 「お灸教室」「おてらおやつクラブ」

真宗高田派の「久遠寺(くおんじ)」は、ビルに囲まれた中区新栄にあります。久遠寺には、聞法の道場としての法務、人の悩みや苦しみに寄り添うおてらおやつクラブ、文化の発信を行う教室の3つの活動の柱があり、2014年から副住職の高山信雄さんがさまざまなイベントを運営しています。

 

「これからの寺はどうあるべきか?」と危機感を持っていた高山さんは、副住職に就くと同時に、寺を次世代へ持続・発展させるための「未来の住職塾」に通い始め、新栄町の駅から徒歩5分という立地の強みを生かし、人が集まれる場を作ることを決めました。

定例のお灸やヨガ教室は、30代、40代といった寺に来る機会が少ない年代層の人も多く訪れます。教室後には、みんなで机を囲み薬膳茶や弁当、お抹茶をいただく時間も。みんなでおしゃべりするのが一番の楽しみだという人もいるそうです。肩書き抜きで仲良くなれるコミュニティが生まれています。

久遠寺がいま力を入れているのが「おてらおやつクラブ」という活動です。寺にお供えされるお菓子などを仏様からの「お下がり」として頂戴し、子どもの支援団体の協力の下、経済的に困難な状況にある家庭におすそわけする活動です。奈良県から全国に広がっていますが、久遠寺は名古屋の拠点として、月に一度ボランティアの人と梱包、発送作業を行っています。

おてらおやつクラブは、単なる物資支援だけでなく、子どもたちが「見守ってくれている人がいる」という思いによって孤立を防ぐことを重視しています。(写真後方右が高山さん)

「仏教に“人の苦しみに寄り添いながら、共に歩む”という考え方を表す言葉『共苦(きょうく)』があります。おてらおやつクラブを通じて社会の現状を知り、自分ができることを行う。お菓子の提供はポテトチップス1袋だけでも構いませんし、30分の手伝いでも十分。寄り添い方は自由です。さまざまな活動を通じて、まず“知ること”からスタートする。そして、いろいろな人のよりどころになれば」と高山さんは話します。

 

久遠寺では、2月5日(月)におてらおやつクラブ、3月4日(日)にお灸教室、毎月定例法話会が開催されています。4月からはヨガ教室も。詳しくは、Facebookページ、「まちのお寺の学校」のホームページをチェックしてみてくださいね。

◆Facebookページ「賢隆山久遠寺」
https://www.facebook.com/kenryuzankuonji/

講座やイベントの詳細は、こちら
◆まちのお寺の学校 名古屋市久遠寺校
http://www.machitera.net/aichi-kuonji/

 

中村区・願隆寺 「お香講座」「精進モーニング」

中村区烏森にある「願隆寺(がんりゅうじ)」は、1660年に開創した寺。名古屋大空襲で本堂を失いましたが1973年に再建されました。現在ではイベントを通じて、多くの人が訪れる場になっています。今回は「お寺のお嫁の手作りお香講座」を取材しました。

「お寺の嫁だからじゃなくて、元々お香が好きで学んでいたんです」と語るのは住職の奥さんである石浜栞さん。栞さんは、OL時代にお香の世界にのめりこみ入門。名古屋から東京に通って勉強しました。同時期に、寺好きということもあり各所でイベントを手掛け始めます。寺ヨガを企画したのが願隆寺との出合いで、その後ご縁があり、現在の住職と結婚されました。

月ごとにテーマが変わるお香講座。1月は、匂い袋を作りました。10種類のお香の原料を混ぜ合わせ、自分好みの匂いを作るところからスタート。ベースとなる白檀や甘い匂いだけでなく、動物臭のような少し癖のある匂いの材料もほんの少し混ぜるのが配分のコツ。材料は、スプーン10杯分。材料を混ぜ合わせる度に、匂いが変化していきます。

「配分の決め方や袋の選び方、香り自体にもその人らしさが表れるんですよ」と栞さん。直観的に作る人、計算して比率を決めて慎重に混ぜる人などさまざま。参加者同士で出来上がった匂い袋を交換しながら、違いを楽しんでいました。講座は、豊田や長久手など市外の人も参加しており、栞さんの優しさに惹かれて毎月通うリピーターも多いそうです。

 

手作りのおかゆが人気の「精進モーニング」は、毎月第一土曜、日曜に開催。両日で100人以上が訪れます。

仏様にお供えするお仏飯を使い、近所の人と一緒に前日から作り始めます。「お母さんのおかゆを思い出す」と素朴な味が大好評。米が光ってくるまで炊くのがコツなんだとか。

精進モーニングは「仏教は難しいと思われがちだが、分からないことを気軽に聞いてもらえる場所にしたい」という思いから企画されたもの。お参りや写経の時間もあります。

モーニングの参加費は、志納金を賽銭箱に入れる、または野菜やお菓子の提供、掃除のボランティアなど、感謝の気持ちを「お志」にします。「精進モーニングを通じて、仏様にお供えすることの大切さやありがたさを知ってほしい」と栞さんは語っていました。

 

次回の精進モーニングは、2月3日(土)と4日(日)8:00~11:30。お香講座は2月が「印香」、3月が「白檀のお線香づくり」です。寺に親しみながら、仏教や日本文化に触れる時間を作ってみましょう。

“寺子屋“へ通う時代ではなくなっていますが、お寺にはたくさんの出合いや学びがあります。実は、愛知県は日本で一番寺の数が多く、東海地方に暮らす私たちにとっては身近な場所なのです。今週末にもイベントが行われますので、寒い時期ですがお寺に出かけてみてはいかがですか。

 

◆Facebookページ「名古屋 願隆寺 精進モーニング」詳細はこちら
https://www.facebook.com/ganryuji.nagoya/

◆Facebookページ「名古屋 願隆寺 お寺のお嫁の手作りお香講座」詳細、申し込みはこちら
https://www.facebook.com/okounokai/

 


 

1/25(木)配信の前編では、天白区・徳林寺「洋服交換市」、平田寺「つながるかもすプロジェクト」を紹介しています。

詳しくはこちら。

”寺活”のススメ(前編)