おんたけで夏登山

2年前から8月11日は「山の日」。夏山に登った経験はありますか? 編集部では一足早く夏山を体験。場所は、長野県と岐阜県の県境にある御嶽山(おんたけさん・標高3,067m)です。名古屋市内からもその頂を見られる日もありますね。大噴火から4年、復興へと一歩一歩進んでいます。

 

古くからの霊山、スピリチュアルスポット

この古い地図は9合目の山小屋「石室山荘」に飾られていたもの。御嶽山の歴史を物語る資料の一つです。図の中央、一番上に描かれた「御嶽神社」は、噴火後に規制され入ることができない山頂の剣が峰あたり。神社の少し右下あたりにある「石室コヤ」は現在9号目にある山小屋・石室山荘(標高2,820m)、さらにその少し下にある「女人コヤ」が8合目にある山小屋・女人堂(標高2,470m)です。

御嶽山は古来よりスピリチュアルスポット、ということを知っていますか? 資料によると、奈良時代の宝亀五(774)年、国内に疫病が流行した際に、信濃守 石川朝臣望足が疫病祓い祈願をしたのが始まりとされています。

江戸時代に入り、山岳信仰の機運が高まります。1700年代後半、尾張の行者・覚明の登山をきっかけに黒沢口の登山道が整備され、覚明の没後に、彼の志を受けついだ信者が布教活動を行った結果、山岳信仰が一般に普及するようになったそうです。登山道には覚明を祀ったとされる霊場のほか、多くの石碑が建てられています。

明治初期までは8合目を境に、女性は入山禁止。男性は白装束に着替え、わらじを履き山頂を目指していたといいます。

今では“山ガール”という言葉があるように誰でも自由に山を楽しむことができますが、かつては修行や信仰のための山。そんな歴史的背景を知って登るといろいろ感じることがあるかもしれません。

 

山小屋に泊まる

写真の真ん中に見える建物は、9合目にある石室山荘。御岳ロープウェイの飯森高原駅から山荘までは約3時間の道のりです。写真は8合目から9合目の途中で撮影。近そうに見えますが、ここからは普通の人で1時間弱(上り)ほど。御嶽山は日帰りで楽しむこともできますが、山小屋に泊まらないとできない楽しみもたくさんあります。

山によって設備は変わりますが、この石室山荘はというと…

食堂兼登山道(写真中央に見える通路)、トイレや手洗い場、この他大小の宿泊部屋、布団の用意もあります。

食事は、山岳信仰の行者さんに配慮した野菜の煮物や天ぷらなど温かい和食をいただくことができます(夕食の一例)。

そして泊まったからこそ見られる、満点の星空とご来光、雲海。天候に恵まれた今回の登山では朝6時前に、朝日、雲海をバックに、ナッツ公式キャラクター・ナゴローの神々しい(!)姿を撮影してみました。遠くに、南アルプス、富士山まで見渡すことができましたよ。

 

山ブーム最盛期に噴火…

2014年9月27日に突如噴火した御嶽山。57人が犠牲となり、今も5人が見つかっていません。山頂近くにある二ノ池と万年雪が見られる場所(写真)は噴火と共に噴出した火山灰に覆われています。噴火前、美しいエメラルドグリーンだった二ノ池は、山小屋にとって貴重な水資源でもありましたが、噴火後は降灰の影響でろ過装置が使用できなくなりました。

「富士山に次ぐ高さを誇る独立峰で、360度見渡せ、北アルプスなどよりも登りやすい。だからこそ登山ビギナーも増えていたのに、噴火後はそのビギナーの方々は戻ってきていない」(石室山荘主人・向井さん)、「ピーク時の2割ほどしか戻ってきていない印象。御嶽はまだ登れないと思われている人も多い」(女人堂主人・起さん=写真右)、と復興がなかなか進まない現状を不安視しています。

立ち入り規制区域は徐々に減り、今年9月27日の慰霊祭までに、山頂付近にシェルターを完成させ、慰霊碑を作る計画が進められています。

御嶽山は、国や自治体、専門家そして地元の人々が協力して少しずつ以前の活気を取り戻そうとしています。夏山登山を計画しているなら、御嶽山も候補の一つに入れてみてくださいね。ただし、7合目以上に登る場合は、登山装備が必要なので、十分な準備も忘れずに。


▼取材協力/
木曽おんたけ観光局
https://visitkiso.com/

石室山荘
http://www.ontake-ishimuro.com/index.html

女人堂
http://www.kiso.ne.jp/~ontake.85.kt/