中川区発祥・幻の「野崎白菜」を使った「招福肉まん」

鍋がおいしい季節に欠かせない「白菜」。日本で流通する白菜のルーツが、名古屋市中川区発祥の「野崎白菜」だということをご存知でしょうか。

原種を代々受け継ぐ野崎採種場と、野崎白菜を使った「招福肉まん」を製造するわーくす昭和橋を取材しました。

「幻の白菜」と呼ばれる野崎白菜

完成当初の野崎白菜

実は、白菜は舶来野菜。中国山東省から日本に入ってきたのは明治8年のことでした。しかし、栽培は失敗続き。中川区の野崎徳四郎さんが結球白菜の栽培に成功したのは、明治27年。日本に入ってきてから約20年かかりました。大正5年には「野崎白菜2号」が開発。この時期、徳四郎さんは栽培方法だけでなく保管や販売の仕方を本にまとめ、多くの農家に伝授しました。そのおかげで、白菜が国内で広く普及されたのです。

種の開発を行う、野崎採種場(美浜町)

現在は品種改良され、野崎白菜が店頭に並ぶ機会は少なくなりました。葉が軟らかく傷付きやすいことから、一般市場で流通されないためです。「幻の白菜」と呼ばれる傍ら、あいちの伝統野菜に認定され、名古屋市内でも生産されています。一度食べると忘れられないほど味の良い野崎白菜。違いを教えてくれたのは、野崎採種場4代目の野崎直行さんです。

 

これが野崎白菜。葉先が内側に巻き込むように結球する希少品種です。スーパーで 流通する品種の葉数が69枚なのに対し、44枚と少なめ。その分、葉が厚く、手で搾るとしたたるほどの水分が含まれています。

程良く歯ごたえはありますが、繊維質を感じさせないほど軟らかくジューシーなの で生で食べるのがおすすめ。白菜特有のえぐみは無く、梨のような甘さを感じられます。

 

市場に出回らないものの、多くの農家に愛される野崎白菜。「名古屋☆中川区ブランド野菜製品開発研究会」は、野崎白菜を知ってもらうため、区内の店舗で野崎白菜を使ったメニューを開発・販売しています。その中でもヒット商品が名古屋肉まん本舗「招福肉まん」です。製造する「わーくす昭和橋」に話を聞きました。

 

「招福肉まん」ができるまで

中川区の「わーくす昭和橋」は、障がいのある人の訓練と生活介護を担う作業所です。野崎白菜のうま味が詰まった肉まんは、四川料理の名店「錦城」のシェフから指導の元に開発された本格派で、肉あんから成形まで全て手作りしています。

「細かい作業なので、初めはB品の山でした。利用者の手で作れる日が来るのだろうか…と気が遠くなるほど。今ではそんな日々が信じられないくらい上達したんですよ」と太鼓判を押すのは、副所長の岡本靖史さん。実際の製造現場をのぞいてみました。

 

肉まん作りのリーダー・山崎勇太さん

生地を伸ばして具を包み、1、2、3、4…と自らカウントしながら、手際よく肉まんが仕上がります。1日に平均260個作るそうです。「肉まんを包む山崎さんは、手先の器用さが別格でした。その人の“伸びるポイント”を考え、発見し、成長した時の感動こそが支援の醍醐味ですね」と岡本さんは笑顔。

 

この日は「招福カレーコーチンまん」を製造

肉まんの売上は年々増加し、2018年度は年間30,000個に倍増。愛知産の食材を使った「コーチン肉まん」「八丁肉まん」「カレーコーチンまん」も好評です。カレーまん以外は全て野崎白菜を使用しています。やはり野崎白菜が、おいしさのポイントなのだそう。素材を徹底的にこだわり抜いた新商品「鳳凰肉まん」も誕生。1月25日(金)に販売開始です。

 

仕事が人を成長させてくれる

「利用者の工賃を上げることは、私たちの使命。今は月2万円ですが5万円を目指しています。そのためにも肉まんのおいしさを伝えていきたい」と岡本さん。

「自分は肉まんを作っている」と自覚を持ち、作業や賃金への向上心が生まれる利用者も多いそうです。「福祉の業界はまだまだ閉塞感がありますが、一度きりの人生だから楽しく働き、いろいろな経験したいのは利用者も一緒です。道半ばですが、この取り組みを成功事例として各地域で広がってほしいですね」

 

名古屋肉まん本舗の商品は、WEBショップで通年購入可能。(招福肉まんは、10個入り2,500円)野崎白菜は、1月27日(日)に中川郵便局で開催される「第8回 野崎白菜はくちゃん祭り」で販売されます。これが今期最後の出荷となるそう。当日は白菜を求めて行列ができるので、ゲットしたい人はお早目に。会場では招福肉まんも販売されるので、ぜひご賞味くださいね。

 


▼名古屋肉まん本舗 WEBショップ
https://nikuman-honpo.com/

 

▼第8回 野崎白菜はくちゃん祭り (産直販売)
日時/1月27日(日)10:00~
※野菜の直売は、10:30~(予定)
会場/中川郵便局(中川区吉良町98-1)
https://www.hakuchan-club.com