働いている人なら誰でもやってくる定年後の人生。仕事一筋に生きてきた人は「効率第一」「経済効果だけ評価」など会社や組織の常識がしみ込み、「弱者への思いやり不足」「コミュニケーション下手」などの問題も抱えています。
そして、定年後、家庭や地域になじめず、離婚したり引きこもりになったりする男性も多いとか。“悩めるおっさん”が楽しくセカンドライフを過ごすには、どうすればよいのでしょうか?
ヒントは、大府市で生活自立を学ぶおっさんたちのドキュメンタリー映画『おっさんずルネッサンス』に。この映画に登場するのは、家事も育ジイ(孫育て)もできて、DVやLGBTなど男性が敬遠しがちな講演会に進んで参加する、頭と心がとっても柔らかな“可愛いげのあるおっさん”たち。映画を撮影した髙野史枝監督は「大府のおっさんたちの明るい顔を、日本中の人にお見せしたい!」と意気込んでいます。
|映画が撮りたい!
映画が撮りたい!
髙野監督は大学卒業後、大手出版社を経て、1989年から放送作家やフリーライターとして本格的な活動をスタート。96年から「あいち国際女性映画祭」の司会を10年以上行い、多くの女性監督にインタビューしているうちに、「映画を撮りたい」という夢をもつように。ドキュメンタリー映画が好きで、10年以上も山形国際ドキュメンタリー映画祭に通い、その記事や評論を書いてきたことから、「ドキュメンタリー映画が撮りたい」との気持ちが具体的に動き出しました。
2010年に『イラン式料理本』というドキュメンタリー映画を見て「キッチンや料理をしている様子だけでも、その国の状況を伝えることができるんだ!」と気付いた髙野監督。もともと食べることや料理を作ることが大好きで、グルメライターとしても活躍していたため、「男性が料理をする姿を撮ったらどうだろうか。そこにずっと関わってきたフェミニズム運動を結び付けたら、面白いドキュメンタリー映画ができるのでは…」とアイデアがどんどん湧いてきました。
そして、2014年にはついにムービーカメラが扱える京都の女性カメラパーソンと運命的に出会い、2015年1月には、楽しく料理をする男性たちの映画『厨房男子』の自主制作を開始。猛スピードで撮影は進み、なんと12月には劇場公開。「映画を作りたい」と考えてから10年ほどで夢を実現させたのでした。
髙野監督は「最近は、音と画を同時にとれるなど撮影用の機材の進歩がすごいから、意外と気軽に映画が撮れるんですよ。50歳を過ぎて映画を作ることができたのも周りのみんなの助けがあったから」と感謝しています。
|おっさんずルネサンスができた理由
大量のコロッケ作り!
「料理を作ってみんなを笑顔にする『厨房男子』が一人でも多くなってほしい」という髙野監督の思いが届いたためか、映画『厨房男子』は大ヒット!名古屋のみならず、大阪や京都、神戸、横浜での上映が実現しました。その後も各地で自主上映会&お話会などが開催されています。
映画の中で反響を呼んだのが「定年後のおっさんたち45人が挑む2,500個のコロッケ作り」というパート。「なぜ登場人物はあんなに楽しそうなのか」「手つきがすごく良い」と質問攻めにあうこともしばしば。食いついてくるのは、登場人物と同年配(60~70代)の男性。「定年後の人生をどう生きたらいいのかわからない。そのヒントはないだろうか」という切実な思いがひしひしと伝わってくるそうです。
そこで、「回答を映画にしなくちゃ」「今度は『厨房男子』に登場したコロッケおじさんたちを主人公にした映画を作ってはどうか」と考え、『おっさんずルネッサンス』が誕生することになりました。
|定年後の人生を明るくルネッサンス
料理でみんなを笑顔に
花が似合う“かわいいおっさんず”
人口9万人余の大府市。25年も前から、市の施設「ミューいしがせ」(大府市石ヶ瀬会館)で「メンズカレッジ」を開催。定年後の男性たちは、セカンドライフを楽しく過ごすための教育をしっかり受けます。「男女共同参画」「生活自立(料理・家事)」「地域活動」などテーマはさまざま。年間23回の講座はなんと全て無料!しかも4年間受講できます。
ここで、「男女が支え合って生きる」という発想や、料理などの家事、コミュニケーションもばっちりの「真人間(笑)」になるべく特訓された男性たちは、家庭や地域で大変ありがたがられる存在に。メンズカレッジを卒業後、自分の得意分野を生かし、ボランティア活動や地域の仕事を始める人も多いのだとか。その活動は、「子どもへの絵本の読み聞かせ」「ふるさとガイド」「ベンチ修理」など多岐にわたります。
髙野監督はミューいしがせで10年間映画講座を担当し、「ここの男性たちは感じがいいなあ」と感心していました。それは、「表情が明るい」「威張らない」「むやみな自己主張がない」男性が多かったから。講座を受ける人同士前歴は一切明かさず、平らな関係を前提に友だちづくりをしていることが大きく影響しているのではないでしょうか。
こんな講座が日本中にあれば、定年後の人生を明るくルネッサンス(再生)する人ばかりに!?髙野監督は「映画に登場するのは、みんなを幸せにする“可愛げのあるおっさん”ばかり。この映画を見れば老後お金なんてなくたっていいんだって思えるはず(笑)。家族や地域とつながることで幸せになる人が増えてほしい。行政の人や熟年のご夫婦、これから老後を迎える若い人など、いろんな方に見ていただきたいですね」と熱く語っていました。
『おっさんずルネッサンス』
【企画・製作・監督】髙野 史枝 (2015「厨房男子」監督)【ナレーション】天野鎮雄(劇団「劇座」代表)【出演】ミューいしがせ「メンズカレッジ」「男性の生活自立のための講座」「男楽会」「おおぶ青春ベンチャーズ」「楽農クラブ」受講生ほか、大府市の男性たち&それを支える女性たち、遠藤英俊(国立長寿医療研究センター)、束村博子(名古屋大学教授)【撮影場所】大府市「ミューいしがせ」、「健康の森」ほか大府市内【主題歌】「おっさんずルネッサンズ」ちんちくりん【後援】大府市、大府市商工会議所、大府市社会福祉協議会【協賛】株式会社豊田自動織機、愛三工業株式会社、知多メディアスネットワーク株式会社、株式会社ワントゥワン ほか 【制作】おっさんずルネッサンス製作実行委員会 2020年/日本/16:9/カラー
▼『おっさんずルネッサンス』について詳しくはこちらから。
髙野史枝(たかの・ふみえ)監督
<プロフィール>
名古屋市緑区出身。愛知大学法経学部経済学科卒業後、講談社出版販売㈱入社。1978年頃からラジオ脚本、テレビ番組構成の執筆を始める。1989年退社以後、放送作家、フリーライターとしての本格的な活動開始。著書『わが家はビストロ』『よみがえれ城下町』『女の色めがね』『恋恋電影』ほか。映画連載記事多数。民放ラジオにレギュラー出演中。大府市ミューいしがせ、各区の生涯学習センターなどで毎年映画講座を担当。ドキュメンタリー映画『厨房男子』『おっさんずルネッサンス』監督。
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『おっさんずルネッサンス』
上映/2020年1月11日(土)~4週間(予定)
場所/名演小劇場(名古屋市東区東桜2-23-7)
チケット/前売1,000円・当日1,500円
問合せ/名演小劇場 TEL 052-931-1701(代)
上映スケジュールなど詳しくはこちらから。
▼名演小劇場
http://meien.movie.coocan.jp/
12月のNAT’sのプレゼントは『おっさんずルネッサンス』のペアご招待券(2組4人)です。応募は、12月23日(月)まで!こちらもぜひチェックしてくださいね。
こちらから!
https://nats.nagoya/?p=3134