仏具の匠の技が生み出すアクセサリー

「尾張仏具」として国の伝統的工芸品に指定されている、仏具の一大産地・名古屋。その中でも昭和45年創業の老舗「ノヨリ」が近年、ファッション雑貨の製造に乗り出しているそうです。新たな事業に進出した社長の思いと、伝統技術を生かしたアクセサリーの魅力を紹介します。

時代の荒波に翻弄される仏具業界の現状


「有限会社ノヨリ」社長・野依克彦さん

江戸時代の名古屋城下では、東別院から大須にかけてが寺院の集中する寺町にあたり、仏具や仏壇を製造する職人が多く暮らしていました。現在でも大須の「仏壇通り」には数々の仏壇・仏具店が建ち並んでいて壮観です。ノヨリは仏壇通りから1本中に入った所に店を構える、仏壇や仏具の伝統的な装飾金具を手掛ける錺(かざり)職人の会社です。

「小学校の同級生は同業者の家の子だらけでしたよ」と懐かしそうに語るのは、社長で自身が職人でもある野依(のより)克彦さん。野依さんによると、明治時代から名古屋製の仏具・仏壇は全国へ広く普及し、昭和の頃までは注文が殺到して目の回るような忙しさだったとか。


ノヨリの技術が生み出す美しい仏具の装飾金具の一例

しかし好景気に沸いた業界にも時代の波は押し寄せてきました。「20年ほど前から安価な外国製に押されるようになりました。おまけにライフスタイルの変化で仏壇・宗教離れが起こり、需要が目に見えて激減したのです」。同業者が次々と廃業するのを目の当たりにして「このままでは技術が途絶えてしまう。何とか新しい道でこの技を活かせないか」と野依さんは同年代の業者仲間たちと協力して奔走を始めました。

 

外部の声を聴いて生まれたアクセサリー


仏具職人の仕事道具である鎚(つち)と各種のタガネ

2017年、そんな野依さんたちに転機が訪れました。皆の努力が実って「尾張仏具」が国指定伝統的工芸品に指定されたのです。これで国から補助金が下りたり、県や市が販売戦略のプロデューサーを紹介してくれたり、今までにない活動をする体制が整いました。そんな中で野依さんが作り始めたのがアクセサリー類です。中でも魚をモチーフにしたピンバッジの「nanako(ななこ)」は、共に釣り好きな野依さんと県の職員との何気ない会話から生まれたものだとか。カツオ、フグ、カサゴなどのかわいい魚たちを銅で質感豊かに表現したこの商品、今後は伊勢湾でとれる魚シリーズや名古屋名物シリーズも開発中だそうです。


魚をモチーフにしたアクセサリー「nanako」

手作業だからこそ生み出される滑らかな凹凸と複雑な陰影。この見事な造形に、古くから受け継がれたノヨリの職人技が生かされていることはいうまでもありません。「女性が男性にプレゼントしたくなるもの」がコンセプトで、女性が好みそうなかわいらしさと男性が好みそうな精緻さを併せ持つ逸品です。

 

【nanako販売予定価格(税込)】

「エビフライ」…7,700円
「カツオ」「ヒラメ」「アジの開き」…8,800円
「カサゴ」「フグ」「カワハギ」…9,900円
※以下は追加予定ラインナップ

「手羽先」…7,700円

<伊勢湾シリーズ>
「マダイ」「メバル」…9,900円
「ワタリガニ」「タコ」…11,000円

 


「nanako」の型(右上)。左上が機械で切り出したサンプル。手前は右上から手彫りを施しふくらませ、手作業で仕上げたもの

 

何ごともやってみなければ始まらない


仕事中の野依社長。奥には仕事で使うパソコン類も

「とにかく何か新しいことを始めるのが大切です。伝統的工芸品の指定を取得したからアクセサリー作りを始められたし、作ったからメディアにも紹介された。色々つながってゆくんですよ」と野依さん。そう語るご自身も伝統的な道具を使って昔ながらの職人仕事をする一方、ノートパソコンやタブレットを巧みに操作して私たちに説明をしてくれます。CADで製図もするそうで、新しい技術を伝統産業にさりげなく取り入れているのに驚かされました。こうした新しい感覚を持つ職人さんだからこそ、魅力的なアクセサリーをつくり出せるのでしょうね。形を変えて受け継がれる名古屋の伝統産業から目が離せません。

 

ノヨリでは「nanako」のほかにも和風アクセサリーの「錺-KAZARI-」、桜モチーフの銅製インテリア「花降(はなふ)ぅり」の商品ブランドを手掛けています。大切な人へのプレゼントにはもちろん、自分へのご褒美にもピッタリ!匠の技が光るアイテムを手元に置きたい方はぜひWEBサイトをチェックしてくださいね。

 


有限会社ノヨリ


和風アクセサリーの一例

詳しくはこちらから
https://noyori.net/