仲間たちと共に。小牧ワイナリーの挑戦

皆さんは日本のワイナリーと聞いてどこを思い浮かべますか?
山梨や信州が有名ですが、身近な小牧市にも素敵なワイナリーがあるのです。その名も「小牧ワイナリー」。愛知県に3つしかないワイナリーのひとつです。

栽培から醸造、出荷まで全てをこなすこの施設は、なぜ愛知県に設立されたのか。どんなワインを造っているのか。

サービス管理責任者の芳賀俊(はが すぐる)さんをはじめスタッフの皆さんに聞いてみました。

 

 

障害者と健常者の垣根を超えて


小高い丘に建つ小牧ワイナリー

小牧ワイナリーを運営するのは名古屋市昭和区の社会福祉法人「AJU自立の家」です。障害者の社会参加を目的とする団体で、小牧ワイナリーにも主に知的・精神障害者の34人の仲間たちが働いています。

「ワイン事業を始めたきっかけは2003年に岐阜県の多治見修道院のブドウ畑の手入れを請け負ったことです」と芳賀さんは話します。多治見修道院は昭和初期の設立当時からワインを製造していることで知られる、いわばワイナリーの老舗。AJUにはワイン造り経験者がいなかったそうですが、思い切って引き受けたのだとか。

 


サービス管理責任者の芳賀俊さん

「世間の常識にとらわれずにまずは実践することを信条としている団体です。ワイン造りには畑の手入れなどの力仕事から、ラベル貼りなどの繊細な仕事まで色々あります。障害のある仲間たちは個人の特性に合った仕事に従事しています」。努力の甲斐あって、今では多治見修道院の全てのワイン生産のほか、合計約1万5千本を扱うワイナリーに成長。赤・白ともに100%小牧産のブドウを使用した商品まで販売するまでになりました。


小牧産ブドウ100%使用の人気商品「小牧城 信長ワイン」

「障害者の経済的自立がAJUの目的のひとつ。現在1人あたりの平均賃金は4万円ほどですが、将来的には障害者年金とワイナリーの賃金を合わせて1人で十分暮らしてゆける収入を得ることが目標です」。障害の有無に関わらず、普通に働く充実感を味わってほしい、との思いを熱く語る芳賀さんでした。

 

適材適所の仕事を笑顔でこなす仲間たち

ブドウ畑での作業の様子

ワイナリーから車で10分ほどのブドウ畑の作業を見学させてもらいました。作業の責任者・伊藤勝教さんの指示のもと、バケツを持って集まる10人ほどの仲間たち。今日の仕事は肥料まきです。仲間たちは肥料いっぱいのバケツを運んでは、伊藤さんに手渡します。「全部の作業をやってもらいたかったけれど“均一”にまくというのが難しいみたいなんだ。無理強いはイヤだからこの方式になったよ」と伊藤さんはバケツを受け取ってどんどん肥料をまきます。

その合間にも「取材が来てるからってカメラ目線で仕事するなよ(笑)!」「みんな!いつもより張り切ってるからペースが速いよ!まくのが大変だ」と冗談交じりの伊藤さんの大声に、仲間たちはどっと笑います。

伊藤さん(手前中央)と笑顔の仲間たち

「平均値を求めるよりも長所を伸ばしてあげたいね。枝切りの名人だ!とか褒めてあげるんだ。褒め過ぎて切らなくてもいい枝まで切っちゃったこともあったっけ」。過去の失敗話に、仲間からまたまた笑いが起きました。

屋内でも仲間たちが包装やボトルのキャップ付けなど細かな仕事に励んでいました。「始めは難しかったけれど、みんなに教えてもらってできるようになりました」と丁寧な仕事ぶり。

芳賀さんが言うように、小牧ワイナリーでは仲間ひとりひとりが自分の特性に合わせて色々な仕事をこなしています。

屋内での包装作業の様子

 

皆が集うワイナリーになりたい


自社製造のワインがずらりと並ぶショップ

ワイナリーにはショップもあり、ワインのほかおつまみやお菓子を販売中です。「今年はコロナの影響でワインイベントが中止になったり施設のカフェが休業になったりと痛手ですが、何とか乗り越えて行きたい」と芳賀さん。「さまざまな方が気軽にお立ち寄りいただければうれしいです。事前に電話を下されば施設の案内もしますよ」

理想のワインを求め、まだまだ道半ばだという小牧ワイナリー。これからも笑顔の仲間たちと、とびきりおいしいワインを造ってくれるはずです。

 

 ▼小牧ワイナリー

https://www.komakiwinery.com/

 

 


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