インク調整用の新聞紙からデザインペーパー開発

古紙を中心としたリサイクル業を展開する株式会社エス・エヌ・テー(名古屋市中区)は、新聞印刷時に出るインク調整用の紙(※1)を「デザインペーパー」として開発し、12月に発売しました。学生インターンの声から生まれた商品は、色調整用に偶然重ねられた色の組み合わせやグラデーション、新聞独特の風合いがよいと、話題になっています。

「Lune Lune(ルーンルーン)~ゴミ山の歌姫」のブランドで売り出す素材は、メッセージカードやブックカバーなどに利用可能。大判のパッケージ紙はちょっとしたプレゼントの包装にも。

廃棄物や不用品に新たな価値を付けることで物の価値を高める「アップサイクル」の一つです。

この商品を手掛けたのは、元ミュージカル俳優志望の同社取締役の篠田朋香さん。いったいどんな女性なのでしょう。

 

ミュージカル俳優志望からリサイクル業の取締役に

篠田朋香さん

篠田朋香さんは名古屋音楽大学のミュージカルコースを卒業後、年2回ほど劇団の公演に出演しながら、日本舞踊の事務所でチケット管理や裏方業務に従事していました。26歳の時、古紙リサイクル業を営む父親に新規事業を始めるので手伝ってほしいと声を掛けられ、同社に入社。当初行うはずだった新規事業は実現しませんでしたが、創業100周年事業などを切り盛りしながら、古紙回収業や生活支援(便利屋)サービスにも関わるように。

当初は、舞台という華やかな世界と、社会のリサイクルの一端を担う、縁の下の力持ち的な古紙回収業のギャップに気持ちがついていかなかったという朋香さん。そんな時、友人に「仕事を舞台だと思えばいい」と言われ、「舞台(=仕事)を面白くするにはどうしたらいいか」と考えるように。

それ以来、いかに仕事を楽しくするかをコンセプトに仕事に取り組むようになりました。

 

学生とともにアップサイクルプロジェクト

紙の可能性や古紙回収の業界をもっと知ってもらいたいと、2020年からはインターンの学生と協力して古紙を使って新しい商品を生み出す『Spread Circulaion SNT』プロジェクトに挑戦しています。学生が表現できる場を増やしたいとの思いもあり、これまで、3カ月1クールで、新聞エコバッグ作成、段ボールで作られた照明を展示する「5感とダンボール ~リメイク照明展」、アップサイクルをテーマにしたアートと映像とショーが織りなす「アートな工場祭」などを展開してきました。

 

打ち合わせをするインターンシップの学生たち

段ボールでできているとは思えない雰囲気のある照明が並んだ「5感とダンボール ~リメイク照明展」

「アートな工場祭」の様子

 

学生とのアップサイクルプロジェクトも2年目に入り、「Lune Lune」のブランドコンセプトづくりからはじめ、ビジネス化を目指し、今回、デザインペーパーの開発・販売にたどり着きました。

「Lune Lune」ブランドロゴ

Luneはフランス語で月を意味しますが、エス・エヌ・テーの会社ロゴが月と太陽であることと、朋香さんの「朋」の字から、学生のアイデアで、ブランド名を「Lune Lune」とすることに。ブランドコンセプトは、廃棄物を出さない、付加価値を付けること。

2月からはまた次の活動が始まるという朋香さん。「『捨てることを減らす』という古紙リサイクルの原点をさらに発展させながら、若い発想を取り入れ、他業種との企業連携もしていきたい」と熱く語ってくれました。

 


▼協力/株式会社エス・エヌ・テー

名古屋市中区三の丸1-10-28
TEL 052-231-5507

http://www.s-n-t.co.jp/

 

▼オンラインショッピングサイト
https://scsnt.thebase.in/

 

★「5感とダンボール ~リメイク照明展」を紹介したTOPICはこちら!

>>>https://nats.nagoya/?p=3848

 

(※1)
※新聞印刷では、色調整のため、インクを試し刷りした紙が一定割合で発生します。これまでは古紙の一部として引き取られ、同社の工場でも処理していました。

 


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