ニュースや新聞で「仮想通貨」という言葉を一度は耳にしたこと、ありませんか? または、仮想通貨で一番メジャーな「ビットコイン」なら聞いたことがある人もいるのでは。私たちの暮らしとの関りが年々増し、「知らない」では時代遅れになってしまうことも…。仮想通貨=電子マネー、ではありません。仮想通貨に詳しい、ファイナンシャルプランナーの加藤仁美さんの解説で、今後5回に分けて仮想通貨の話題をお届けします。
|インターネット上にのみ存在
仮想通貨は日本での通り名で、海外では「暗号通貨」とも呼ばれます。実物の貨幣・紙幣はなく、インターネット上にのみ存在する通貨です。種類は全世界で3000種類以上あるといわれています。代表的なのが、ビットコイン(BIT)、イーサリアム(ETH)、リップル(XRP)など。これらの代表的な仮想通貨は世界共通で普及しており、その仮想通貨を使って商品を購入したり、海外へ送金したりということが可能です。
身近なところでは、7月中にもビックカメラ全店で「ビットコイン」での決済ができるようになる予定で、名古屋周辺の一部店舗(7月22日現在で17、「ビットコイン日本語情報サイト」参考)などがビットコイン決済に対応しています。仮想通貨の利用については、3回目以降に詳しく解説します。
この仮想通貨には主に3つの特徴があります。
- 発行主体・管理者がいない
- 全ての取引履歴が記録・管理される
- 海外への送金コストと手間が少ない
発行主体・管理者がいない、というのがいわゆる「現金」との大きな違いです。「通常は各国の中央銀行が発行・管理するものですが、多くの仮想通貨には発行主体が存在しません。特定の誰かに管理されたものではなく、高度なIT技術をもった複数のプログラマーが管理、価値や正当性を保証しあっているのです」と加藤さん。
また、仮想通貨は、「ブロックチェーン」と呼ばれるネット上の「取引記録台帳」に全ての取引状況が記録されています。これを遡ると、過去全ての取引履歴を確認することができるのです。つまり脱税や、マネーロンダリングなどの不正ができなくなるということです。
さらに、海外へ送金のコストと手間も省けるという優れた点も。通常海外への送金時は、〈送金手数料〉〈為替手数料〉〈受取手数料〉という3つのコストがかかります。「送金手数料の相場は4,000円ほど、為替手数料は1ドルあたり1円ほど、受取手数料は受け取る相手側の金融機関で決められています。個人で海外へ送金する場合に、1回あたりの手数料がこれだけかかると大きな負担ですが、仮想通貨であれば世界中どこへでも一律数円です(2017年7月現在)」(加藤さん)。留学先のお子さんとのやり取りなどに利用する人も多いそうです。
|電子マネーではない
ここまでの説明で、「電子マネーなの?」と思われた人もいるでしょうが、違うものです!
紙幣や硬貨が存在せず、インターネットなど電子上でしか扱えないという点においては類似点もありますが、どう違うでしょう?
電子マネー=現金の対価
ビットコイン=ネットワーク内でゼロから価値が生み出される、その価値は常に変動する
そしてもう1つ。
・現金は中央銀行が印刷する限り無尽蔵に増やすことができる
・ビットコインは最大発行量が決められている。(2017年7月22日現在は、2100万ビットコインが最大とされている)
「仮想通貨は、電子マネーではなく、金やプラチナと近い存在、とイメージしてみましょう」と加藤さんは指摘します。「金や銀、プラチナといった貴金属は、金融商品の1つとして高値で取り引きされていますが、そもそも誰かが発行(=作り出してる)しているわけではないですよね。そして、地球上に埋蔵されている絶対量は決まっているといわれています。 絶対量が決まっている『金』に対し、その希少性などから人間が価値を想定し高値で取り引きされているわけです」
ビットコインを代表例に説明しましたが、他のメジャーな仮想通貨においてもこの概念は当てはまります。
|仮想通貨は世界を変える?!
仮想通貨の普及は、世界通貨の未来を大きく変えるかもしれませんし、皆さんの生活を変えるかもしれないし、はたまた、大きなチャンスになることだってあり得ます。
中でも、「ビットコイン」は、インターネットが情報伝達の大ブレイクスルーであったのと同じように、〝新たな通貨の大発明“として歴史に刻まれることになる可能性もあります。
「ビットコインのように、中央銀行を介さず、政府に監視されず、自由市場の原理に則って、世界中のどこにでも一瞬にしてほぼ手数料ゼロで送金できる通貨というのは、これまでに存在しなかったからです」(加藤さん)。
日本では2014年にビットコインの両替所が破綻し、大きな損害が出たことで、仮想通貨にマイナスのイメージを抱いている人も多いかもしれませんが、セキュリティや利用方法は日進月歩で改善されています。
今後、仮想通貨が世界中で拡大していくことは確実。興味のある人は、まず制度や仕組みをしっかり理解することから始めてみてはどうでしょうか?
次回は
「仮想通貨のメリット、デメリット」をお届けします。
▼取材協力/
ファイナンシャルプランナー 加藤仁美さん
名古屋周辺の企業や住宅展示場、葬儀場などで、お金に関するセミナーや保険の見直し、資産運用などの個別相談を務める。子どものおこづかい教室から相続・贈与までテーマはさまざま。