岐阜県揖斐駅から三重県桑名駅までの全長57.5kmを結ぶ養老鉄道。9年前から薬膳料理を味わえる「薬膳列車」が走っています。揺れる車内ににぎやかな笑い声がいっぱい。ヘルシーランチとスタッフの軽快なトークで盛り上がります。
|3両のうちの1両が薬膳ビストロ専用に
薬膳列車は木・土曜日に運行。木曜は桑名発大垣行き、土曜は大垣発桑名行きです。料金は大人5,000円、子ども4,500円で、7・8月はサマーキャンペーン、1・2月はウィンターキャンペーンとして1,500円引きに。食事と養老鉄道の一日乗車券がついています。お昼時の普通列車の一部車両を利用するもので、特別豪華車両というわけではありません。
取材は7月初旬の木曜日。近鉄名古屋線で一路桑名駅へ、降りたホームのすぐ向かいに薬膳列車はすでにスタンバイしていました。12:45桑名発大垣行きの普通列車。3両編成の後ろ側1両が薬膳ビストロ専用車両です。30人が乗り込みいざ出発!
出発から間もなくランチがスタート。料理とサービスを提供するのは、養老町で薬膳料理店を営む寿喜養膳(すぎようぜん)です。「お客さまと名前が被って失礼のないように」と、スタッフ同士は「ダニー」「ジーター」「テリー」「アシュレイ」というように洋風の呼び名で声を掛け合います。
|7、8月は洋風仕立て
【左上】冷静トマトとモロヘイヤうどんパスタ【右上・プレート内】ごぼうとパプリカの彩りピクルス、夏野菜&シラスのオムレツークコの実入り【右下】モロヘイヤスープ【左下】ふすまパンと自家製黒ニンニク、ミルクチーズクリーム添え
はすの実甘納豆、大垣養老高校生徒作クッキー、玄米炭ティー、スギナ茶(写真外)
「旬のものを旬の時期に、できるだけ生の状態に近い調理法で作る料理が薬膳料理。体の調子を整え、病気を未然に防ぐことを目的に作ります。地元の高校生がつくったスイーツもあるのでお楽しみください」とスタッフのジーターさんが解説。13種の生薬でつくられた食前酒で乾杯した後、使用した一つ一つの食材について説明を聞きながら味わいます。7、8月のみ洋風仕立てで、それ以外の時期は和風仕立ての薬膳メニューが並びます。
列車が出発して約30分後に駒野駅付近を通過、食後のデザートが運ばれてきます。「この先はカーブが多いエリアになるので食事には不向き」と、30分で食べ終えられるよう配慮されています。「ちなみに、桑名発の方が揺れるんですよ、それは最後尾に薬膳車両があるから。大垣発は先頭車なので揺れが少ないんです(笑)」とダニーさん(写真中央)。
岐阜県養老駅を通過する頃、BGM付きの「薬膳ショッピング」が始まります。この日食べた黒ニンニクや飲んだスギナ茶などを車内販売。〝軽快で嫌味のない“営業トークに参加者もすっかり引き込まれます。最後に座ったままできる手軽なストレッチ。13:54大垣駅に到着です。
|昼間の利用者アップを目指して
9年間でのべ3万人の利用があったという薬膳列車。どうして薬膳列車だったのですか?と尋ねると、「実は偶然だったんです」と返答が。
桑名―揖斐間は元々近鉄による運行でしたが、9年前に養老鉄道が設立され運行することになりました。(近鉄以前にも「養老鉄道」という会社が運行していましたが、業務体系は異なります)
「生活路線なので朝・夕の通勤通学時間はそれなりに利用がありますが、昼間の利用が少なく苦しい状況で。食事付きの列車を始めようかと考えていたところ、ちょうど寿喜養膳の杉山(ダニー)さんが営業に来られて。もちろん最初は知名度もなく苦戦しましたが、最近は年間通じて予約が入るようになりました。5回リピートしてくださった方もいるほど」と養老鉄道総務企画課の小林峰生さん。
道路の整備によって車利用の人が増え、乗客数は右肩下がりではあるというものの、薬膳列車はその逆、毎年利用者を増やし続けています。自転車を一緒に乗車できる「サイクルトレイン」を運行させたり、薬膳列車を運行させたりと、知恵と工夫で利用者増に取り組む養老鉄道。名古屋からのアクセスも、出発の大垣駅まではJRで30分、桑名駅までも約20分と便利。電車で養老方面へ出かけてみませんか?
▼取材協力/養老鉄道
【薬膳列車の予約・問い合わせ】
同社総務企画課 0584-78-3400
8月の運行は、3日(木)、5日(土)、24(木)、26(土)のみ、予約の締切は、前週の木曜日