復刻版「お彼岸縁日」はまちづくりの起点

毎月28日、名古屋市中区の東・西別院周辺は、普段の静かな雰囲気から一変、賑わいと活気あふれるまちへと変わります。「最近始まった流行りのマルシェ」かと思いきや、歴史をひも解くと…。

「オシャレして出かける「縁日」再現

「東別院てづくり朝市」は、寺に人が集い、賑わいが生まれる場所になってほしいと2013年5月にスタート。真宗大谷名古屋別院(東別院)の呼びかけで、あま市甚目寺で行われていた朝市の運営者と協力して実現させました。

出店数約100店からスタートした東別院の朝市は、今や200を超すショップが並ぶ人気の“マルシェ”。「西別院朝市」「たちばな 大木戸ひなた市」「門前町クラフト市」のほか、周辺にある寺社仏閣や歴史探訪をするガイドツアーも同じ28日に開催。若い女性やベビーカー連れのママ、ファミリー層が多く訪れ楽しむ姿が見られます。

28日…親鸞聖人の命日。東別院は、親鸞聖人を宗祖とする浄土真宗。

日置神社で開催される「大木戸ひなた市」、協議会FBより

「全国各地で流行りのオシャレなマルシェ」という印象かもしれませんが、「この朝市は、もともと東別院にあった賑わいの形を現代風に再構築したものというのが本当のところ」。こう話してくれたのは、東別院の西隣にある崇覚寺の住職で、ガイドツアーの企画、マルシェ運営にも携わる「なごや寺町まちづくり協議会」代表理事の水谷玄(はるか)さん。生まれも育ちもこの寺町界隈という地元のご住職です。

もともと東別院では、「お彼岸の縁日」が開かれていました。昭和40(1965)年ごろまで、家庭を守る女性はなかなか外に出かけられず、オシャレしてお小遣いをもって外出できるのは縁日の日くらいだったそう。

「縁日が開かれる日は、東・西別院周辺の露地は終日カランコロンと下駄の音が鳴り渡り、訪れる人は絶えなかったそうです。午前中は東別院、その後、西別院、最後に大須へ行って楽しむという流れもあったとか。ところが、昭和50年代以降は生活環境が変わり始め、働く女性が増え、周囲にはショッピングセンターなど気軽に出かけられる場所も誕生。寺を訪れる人も減っていきました」

 

地元で知られていなかった…協議会発足

マルシェ開催が始まると、昔のように若い女性が集まり、賑わいが復活。「大成功」かのように見えたのですが、実は地元住民には全然知られていなかったのです。

「囲われた別院の中のことはよく分からないと言われてしまい…。寺はそもそも地元の人に開かれていて、支えてきてもらったにも関わらず、この賑わいを知られていないのはいけないと危機感を感じました」(水谷さん)

そこでできたのが、近所の寺の住職、神社の総代さん、地域の住民などで構成される「なごや寺町まちづくり協議会」。朝市スタートと同じ年に誕生。賑わいを生かし、寺町の魅力を再発見できるような仕掛けをと寺町めぐりなどが始まり、取り組みによって、大学や行政、いろいろなジャンルの人と協働、支え合っています。


まちめぐりで訪れる「妙善寺」、協議会FBより


協議会HP上にある、街歩きに便利なマップ(PDF)も

28日の朝市で参加者を募る「東西別院まちめぐりガイドツアー」のガイドは地元住民。訪問先の寺では、各寺院の住職や神社の総代が話をします。「名古屋城から南にのびる本町通り。ここは江戸時代の名古屋のメインストリートでした。城下最南端である橘町には大木戸という門がありまして…」なんて、あの有名タレントさんが街歩きをする人気番組さながらの解説も聞けてしまいます。

 

宗派を超え、まちづくりのために

本来は交流があまりない東・西別院の住職、宗派の違う寺の住職、神社の総代さんが垣根を越えて頭を付け合わせて考え、まちづくりをするという全国的にも「異色な」協議会。「だからこそ」のメリットもあるそう。

「地域のお坊さんや神社の方の話ならと、地元の人々に聞き入れてもらいやすい。代々住み続けている人も多く、まちぐるみで何かをしようとする時は、話をしないといけないですよね。寺は本来、“地域の相談役”としてまちづくりに携わってきた。宗派関係なく、まちのために役立ち、地域が元気であることが大切。もともと根があったところに、水をまいただけ、ですから(笑)」(水谷さん)

今月28日は土曜。グルメにショッピング、パフォーマンス、寺めぐりありの「朝市」にお出かけしませんか。


●取材/写真協力

なごや寺町まちづくり協議会

各朝市の開催時間は以下ページで
http://nagoya-teramachi.net/
https://www.facebook.com/nagoyateramachi/