先週12月7日~9日の3日間、東京ビックサイトで開かれた「エコプロ2017」。環境・エネルギー問題を中心に、社会課題解決に貢献するイベントで、全国から約16万人の来場者がありました。見所満載のイベントの中から編集部が注目したポイントをご紹介します。
|小学生から大人まで環境学習を楽しむ場
主催者提供
「エコプロ」は「エコプロダクツ」の略で、環境に配慮した製品の展示会というスタンスで開催されてきました。大手メーカーや大学、自治体、オーガニックアイテムを扱うショップなどがブース出展。来場者は自由に見て回ることができます。
でも、ただの展示会ではなく、「取り組みの輪を広げていくための体験型イベント」という方が近い印象。「環境展」と聞くと、“堅苦しくて難しそう”なイメージを持ちそうですが、ワークショップやゲーム形式の仕掛けが多く、楽しみながら環境について学ぶことができます。最初の2日間は平日開催ということもあり、小学生、中学生ら学生が多数来場。子ども向けかと思いきや、大人も本気で取り組んで楽しめる構成になっていました。
|「SDGs」「ナノセルロース」
今年のエコプロは、「SDGs」(エス・ディー・ジーズ)と「ナノセルロース」の2つのキーワードに関連したブースやセミナーが印象的です。今後環境分野では注目される言葉になるはずなので、“小難しそう”でも覚えておいてくださいね。
ちなみに、「SDGs(Sustainable Development Goalsの略、持続可能な開発目標)」は、 2015 年 9 月に国連で採決された新しい環境目標。貧困解消やクリーンエネルギーの実現、気候変動への具体的な対策をしよう、といった17の目標を掲げ、2030 年までに国連加盟国が達成をめざす世界的な目標です。メーカー各社は、自社の取り組みがSDGsのどの目標に関連したものなのかを具体的にPR。一般社団法人 日本サスティナブル・ラベル協会によるセミナーでは、環境基準をクリアした商品に表示されるさまざまなラベル(【海のエコラベル】や【有機JAS】【国際フェアトレード認証】)の紹介と、SDGsとの関係が分かりやすく解説されました。
「ナノセルロース」とは、紙の原料であるパルプ(木材繊維)から作る自然素材で、髪の毛の約2万分の1と極細ながら、強さは鉄の5倍といわれるスーパー素材。航空機や自動車の構造材として、また、おむつの消臭シートに、さらには食品にと、次世代は「ナノセルロース」を使った商品が増えるかもしれません。
|自転車をこいで作る「チャリックス」
筆者が一番印象に残ったものは、奈良県の老舗靴下メーカー創喜(そうき)が行っていたワークショップ、その名も「チャリックス」!
自社の靴下編み機と市販のエアロバイクをつないだオリジナルマシーンで、来場者が好みの糸を選んで、自分で自転車をこいで靴下を編んでつくるという新しいスタイルです。奈良県は日本一の靴下生産地。最盛期は2000近くあった業者が、海外製の安価品に市場がとられ今では100社ほどになっているそう。自分で作ることでモノを大切にすることを思い出してほしいという期待も込めて、今年この「チャリックス」専用マシーンを開発しました。
糸は色がついた綿糸、吉野葛の繊維を混ぜて作った和紙を原料にした糸、シルクなど。約10分同じペースでこぎ続けるとオリジナルソックスが出来上がります。通気性もよく、ふっくらとした履き心地で、オールシーズン使える靴下。下の靴下は筆者が実際作ったものです。市販品のような仕上がり(!)で愛着がわきそうです。
|名古屋市からもブース出展
ここ名古屋や愛知からもブース出展している団体や企業がありました。
「フェアトレードタウンなごや」として出展した名古屋市のブースでは【バナナペーパー】で作られた名古屋城と名古屋テレビ塔の模型を展示。バナナペーパーは、オーガニックのバナナの茎から取れる繊維を使って作られた紙で、日本初となるフェアトレード認証 (WFTO 世界フェアトレード機関)を取得した紙でもあります。完成度の高いこの名古屋のシンボルに立ち止まる人が多くみられましたよ。
もう1つ紹介するのは、「なごや環境大学」のブース。名古屋の大学生が企画・デザインを担当した「幸福を願うハンガーツリー」(写真右)で、企業から提供してもらったハンガーをツリーのように組み合わせディスプレー。当日は、来場者にシャツの形をしたメッセージカードにエコな一言を書いてもらい、ハンガーツリーにかけてもらうもの。クリスマスの時期に合わせたアイデアです。
展示会は大小さまざまなものが全国各地で行われていますが、今回のエコプロは目的がはっきりしていてとても印象深いものが多くありました。実際に見て・触れてみると、より「エシカル」なアクションがどんなことなのか理解が深まります。
「来年も開催予定」とのことなので、時間のある方は一度足を運んでみてはいかがでしょうか。