メダカの住む水流で栽培「いなべ清流クレソン」

鈴鹿山脈の麓。三重県いなべ市で、山からの伏流水とこだわりぬいた堆肥で作られた「いなべ清流クレソン」が栽培されています。

クレソンは、肉料理の添え物というイメージがあるかもしれませんが、とても栄養価が豊富。ケールよりも鉄分や葉酸が多く含まれ、デトックス効果も高く、古くはギリシア時代から健康効果がうたわれていたそうです。まだまだ脇役の扱いをされているクレソンに注目した、クレソン専業農家の松本國昭さんに話を聞きました。

 

テレビマンから農家へ

松本さんは、元々名古屋のテレビ局で番組を作っていたプロデューサーでした。取材などを通して農業に興味を持ち、6年前から仲間と一緒に岐阜でクレソンを作り始めましたが、田んぼでは管理栽培が難しく、夏と冬にはクレソンがうまく育ちませんでした。年中安定した出荷ができず、農家として経営を続けることが難しくなった2年前、植物性の野菜くずで有機堆肥を作る吉田和雄さんの農園「いなべKyファーム」を訪ね、共同栽培をあおぎました。

 

野菜から野菜を作る

「今のクレソン栽培が成功しているのは吉田さんのおかげ」というほど、松本さんが絶大な信用を寄せているのが吉田さん。いなべKyファームの前は、エクステリア会社を経営していました。新事業として野菜くずの産業廃棄物処理工場で堆肥を作っていましたが、思うように売れずに堆肥は余るばかり。そこで自社の堆肥を使った栽培をして、野菜を流通させようと決意しました。


愛用のショベルカーに乗る吉田さん

Kyファームの土地は、初めは木が生い茂る原野で、農地にするのはあまりにも困難な状況でした。しかし、吉田さんは得意の重機を使って開墾。約2.5haの土地を「いなべkyファーム」として生まれ変わらせました。

牛糞など動物性の材料を一切使わず100%植物性の有機物で堆肥を作る吉田さん。「とにかくおいしい野菜を作るために、最高の堆肥を作っている。野菜の鉄分を増やしたいと思ったら堆肥にごまを入れたりね。堆肥にふさわしい業者から廃棄物を回収している」。廃棄物といっても、規格外というだけで食べられる物ばかりです。野菜から野菜づくりをする、という循環を生み出しています。

Kyファームの堆肥だけで作られた野菜「ちゃふやさい」は、どれもびっくりするほどおいしく仕上がるそうです。この春できたスナップエンドウは糖度15度と果物並みの甘さがあります。最近では、日本で栽培が難しいといわれていたアーティチョークやカーボロネロなどのイタリア野菜にも挑戦しています。

 

メダカが暮らす清流で育てる

屋外とハウスで栽培されるクレソンには、鈴鹿山脈の地下60mから引いた地下水が使われています。しかも吉田さんの液肥を使っているので、栄養価がさらに増しているそうです。葉が大きく茎が太いクレソンですが、えぐみや苦みがなく、とにかく食べやすいのが特徴。

農薬を使っていないので、クレソン畑にはメダカが住み着いています。「メダカが安心して住めるかどうかを、環境のバロメーターにしている」と松本さん。


白いクレソンの花が満開に

ハウスの中にも水流を通したことで年中収穫ができ、東海地方では最も規模の大きいクレソン農園となりました。

 

クレソンを食卓の中心に

「クレソンをメジャーにさせたい。もっと人の話題にクレソンが出てほしい」と願う松本さん。「クレソンは高価で、少しの量で売られている物ばかり。それでは添え物にしかならないから、その状況を打ち壊したかった」という想いが通じ、名古屋市内でクレソン料理の店も出現。千種区・覚王山のダイニング「Five e’s(ふぁいぶいーず)」では2017年11月からクレソン尽くしのフルコース(9品)がいただけるようになりました。


クレソンが主役のサラダ


クレソンのだしまき卵


デザートは、バニラアイスにクレソンソース!

シェフの奥山千之(かずゆき)さんは、「クレソンは万能。例えば、ネギのように料理に乗せると料理の味が際立つんです」と太鼓判を押します。

清流クレソンは伏見の八百屋「My farmer」(100g入りで250円)や名古屋市内のオーガニックスーパー「旬楽膳」でも購入可能。いなべ清流クレソンを食べて、クレソンの可能性を感じてみては。

 


▼清流クレソン(産直販売)
http://shop.smart-farm.jp/

 

▼Five e’s(ファイブイーズ)
場所/名古屋市千種区覚王山通9-19 覚王山プラザB1F
営業時間/11:00~16:00、16:00~24:00
※クレソンフルコース(1人3,500円)は、夜のみ
定休日/火曜
https://www.facebook.com/fivees/