ペットの防災 -いっしょに逃げてもいいのかな?-

日本のペット数は約1840万頭。(2017年、ペットフード協会調べ) 15歳未満の子どもの数を超えており、ペットを飼う人はとても多いです。飼い主にとって家族同然のペットですが、防災対策はできていますか?

株式会社ドリーム(名古屋市東区)で、動物と人の共生共存を目指し、ペット防災の啓発活動などを行う事業「LEONIMAL」(リオニマル)担当の伊尾晴香さんに聞いた「災害時にペットを守るための行動」を紹介します。

 

避難先はさまざまなケースを想定して

災害が起こった場合、飼い主とペットは一緒に避難所に行ってもいいのか。飼い主なら一度は考えたことがあるのでは。

「同行避難」という言葉をご存知でしょうか。飼っているペットといっしょに避難場所へ逃げることを指し、国としては、この同行避難を推奨しています。(環境省「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」)

しかし、病院や幼稚園などの行政指定ではない避難場所では、ペットの受け入れが困難な場合も。「避難所に同行避難ができたとしても、ペットの生活空間は状況によってさまざまです。飼い主の車内や、テントを活用する方法もあります」

避難所には緊急医療の環境が用意され、多くの支援情報が集まります。事情によっては、人は避難所で過ごし、ペットは自宅の安全な場所で飼育。避難所からお世話に通うという手段も。「避難所に近い家で物資を持ち寄り、共同飼育をするのも考えられます。その時々の条件や状態に合わせてペットの避難先を確保しましょう」(伊尾さん)

また、災害時はストレスを抱えがちで、ささいなことがきっかけでいさかいが起きることも。飼い主は普段以上の配慮が必要です。

動物を受け入れる避難所でも、中には動物が苦手な人やアレルギーがある人がいるかもしれません。居場所をすみ分けたり、人と動物の出入り口を別にして動線を分離する工夫をしましょう。「共に過ごすためには苦手な人を気遣ったり、“こんな時だから動物にも居場所を与えてあげよう”という互いの思いやりが欠かせません。理解して協力することで、多くの命を救うことができます。まずは、人と人同士のコミュニケーションが重要ですね」

 

“うちの子”の特徴を言えますか?

普段からできる備えとして、お勧めの2つを紹介します。

●印刷した「迷子ポスター」

地震などで窓ガラスが割れ、驚いたネコが外に飛び出し離ればなれになるケースなど、被災がきっかけでペットが行方不明になることは珍しくありません。スマートフォンの充電が切れて機能せず、ペットの写真を持っていなかったり、身体的特徴を伝えられないとなると、探すのが困難になってしまいます。

「事前にこのような“迷子ポスター”を作っておくと、いざという時に役立ちます。見つかった時、飼い主であることを示せるよう、自分とペットが一緒に写る写真もあると便利ですよ」

 

●離れて暮らす知人にペットの話しをする

一緒に避難することが難しい場合や長期避難に及んでしまった時、ペットを預かってくれる人がいると心強いです。「実家や親戚、友人に災害時の相談をしておく、日常的にペットに会って慣れてもらうと安心ですね。人に懐く、無駄吠えしない、他の動物と仲良くできるなど、普段からペットの社会性をきちんと身に付けておくのも大切です」

 

防災グッズは、普段から活用を

LEONIMALでは、災害時に役立つ商品開発を行っています。

リュック型ペットキャリー〔GRAMP〕(グランプ、48,600円)は、緊急時の移動用キャリーとしての用途だけでなく、避難先で過ごすということも想定した商品。普段からお気に入りの居場所として活用し、おでかけやレジャーシーンにも。自ら入るほどお気に入りの場所になるネコもいるのだとか。

 

現在は、より普段使いしやすいスリング型のキャリーを企画中。お出かけや避難時にはペットキャリーとして、自宅ではケージに変身。

ペット×防災のスペシャリスト、NPO法人アナイスの平井潤子さん監修「いぬとねことわたしの防災 いっしょに逃げてもいいのかな?ペットの基本防災BOOK」も販売中(12月中に改訂版を発売予定、1冊756円)。ぜひチェックしてみてくださいね。

 

「動物の命も、人命を守るのと同じで、人や地域の連携は重要です。普段からペットを受け入れてもらえる環境を作ることは、動物の社会的地位を守ることにつながります」

ペットの防災は、“どうしたら人と動物が共生できるのか”を考えることと同じ。非常時に限らず、互いが快適に暮らすために「地域コミュニケーション」「ペットの社会性を育む」など、いま始められることを考えてみませんか。

 


▼LEONIMAL(リオニマル)
https://aisocial.jp/

 

▼いっしょに逃げてもいいのかな?(動画)

 

参照資料/

環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3002/0-full.pdf