誰でもなれる看護師「コミュニティナース」をご存じですか?
コミュニティナースとは、職業や資格ではなく、“人とつながり、まちを元気にする”実践の在り方で、「コミュニティナーシング」という看護の実践からヒントを得たコンセプトです。
飲食店の店主や会社の経営者、学生など、人とつながり、まちを元気にしている人は、誰もがコミュニティナースになれるとのことです。
元看護師で、部品製造業、山本製作所(豊川市)の社長、田中倫子さんは、豊川市を拠点にコミュニティナースとして活動しています。
看護師は病院にいるとは限りません。人々に笑顔と勇気を届けるコミュニティナースは、実はあなたのすぐそばに…。
コミュニティナースとは、いったいどんな存在なのでしょうか?
|つい忘れがちな大切なもの
コミュニティナースの田中さん(右)
コミュニティナースとは、「健康診断を受けましょう」「病院に行って」と推奨するのではなく、まちを元気にする活動を行っている人です。
朝、会社や学校に向かう途中で「おはよう」とあいさつする相手がいること。お昼に新しいごはん屋さんを開拓する元気があること。一人の時間を楽しめる余裕があること。「ほんの些細なことだけど大切な何か」を忘れてしまいそうな時。そっと思い出すきっかけをつくってくれるのがコミュニティナースです。日々の暮らしの中で一番忘れてはいけないことを一緒に見つけていきます。
|痛いと言う人に寄り添う
イベントで心肺蘇生法を指導
田中さんがコミュニティナースになろうと思ったのは、バタバタと忙しい現役の看護師だった頃のこと。ドクターの片腕として注射や点滴をするのが看護師と思っている人たちも多く、病院に来た時点で手遅れの人を見ては、「看護師とは何だろう」と思い悩む日々でした。
そんな折、コミュニティナースとして一緒に活動する佐藤さんから、島根県雲南市のコミュニティナース矢田明子さんを紹介され、改めて「看護の基本」である“共に寄り添う”“共に分かち合う”大切さを確信した田中さん。誰でも簡単にできる“大丈夫だよ”と声を掛けたり、手を握ったり、背中をさすったり。こういうことが看護の本質だと気付かされました。「おなかが痛いという人のおなかを調べるだけでは原因がわからないことも多い。実はもうじき迎える手術が初めてで不安でいっぱいだった。実は心臓に悪いところがあった。痛みや気持ちを言葉にできない。そういう人はたくさんいます。看護師が患者さんの少しの変化に気付かないと、それが命とりになる場合だってあるんです」と話していました。
|生きるための活力
地域の百貨店とのコラボイベント
田中さんの活動は多岐にわたります。異業種交流会や職場体験講師、子どもたちへの心肺蘇生法の指導…。
ドラッグストアで開いた食事会では、素敵なエピソードを聞かせてくれました。
夫婦がたまたま参加した食事会のメニューは「アヒージョ」でした。ごはんを食べたがらなくなったという夫を連れてきた女性は、大勢の人に囲まれながらたわいもない会話と食事を楽しんでいました。夫はといえば、一口食べてその後無言…。「失敗だったかな」と思いながらも、次の日、妻が夫に「何か食べたい?」と聞いたところ、「この前食べた洋風の天ぷらを作ってくれんか?」と、食事に対して前向きになってくれそうです。
「その話を聞いてとてもうれしかった」という田中さん。「生きるための活力が食事。食べる意識が低下すると家から出なくなったり、消化器官が弱ったりします。ごはんを食べたり笑ったりすることは全身運動にもなります。ウオーキングマシンよりお手軽ですよ。みんなと食べる、しゃべる、認めてもらえる。そんな場をつくっていきたいですね」と力を込めます。
|コミュニティナース増やしたい!
誰でもなれるというコミュニティナース。人を思いやる心、観察力は必要不可欠なようです。特に育児や介護で看護師をやめてしまった人の経験など宝です。しかしながら医療の知識は日進月歩で、いったん現場を離れたら、職場復帰するのはなかなか大変とのこと。
「コミュニティナースの存在さえ知らない人も多い」という田中さん。他の市町村ではコミュニティナースを育成するための組織もあるようですが、愛知県ではまだまだの状況。「いったん看護職を離れた人でも、積んできた経験、倫理観、看護学の知識を生かしてコミュニティナースとして再び輝いてほしい。コロナ禍だからこそできる病院外での活動があるはず」と熱く語っていました。
▼田中さんのFBはこちらから。
https://www.facebook.com/yss.brand
★田中さんの町工場の取り組みを紹介した「STORY2020.9.17号掲載『町工場発!猫の抗菌マスク掛け』」は、こちらから。
>>>https://nats.nagoya/?p=3608
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