四十七都道府県の中で寺院数が最も多いとされる愛知県。なぜ、寺院数がそんなに多いのでしょうか。
かねてから愛知県内の寺院を訪ね歩いていた仏教コラムニストの大塚耕平さんが、弘法大師ゆかりの写し霊場に焦点を当て、その理由を探求しました。大塚さんの著書『愛知四国霊場の旅』(1,650円)を読めば、そのヒントが見つかるかもしれません。
|仏教との出合い
大塚耕平さん
愛知県内の霊場を巡る大塚さん
お遍路ブームの影響もあり、老若男女に人気となっているパワースポット巡り。最近は歴史や自然を感じながら神社仏閣で御朱印を集めてコロナ収束を願おうという人も多くなっているのでは。
ブーム以前から四国や愛知県内の札所を巡っていたという大塚さんはいったいどんな人なのでしょうか。
大塚さんは1959年名古屋市千種区で誕生。男ばかり四人兄弟の末っ子。自宅に下宿する親戚のお姉さんや兄弟とにぎやかに過ごしていました。小学校の時は家の近くの日泰寺の境内や名古屋大学のグラウンドでよく野球を楽しんでいたそうです。
愛知県立旭丘高校卒業後は早稲田大学政経学部経済学科へ。学生の頃から休みには時々寺社仏閣巡りをしていたという大塚さん。卒業後は日銀に入行し、あわただしい日々を過ごしていましたが、20年ほど前に選挙活動のため地元へ。国会議員としての事務所を、母校の田代小学校、城山中学校の学区内にある覚王山日泰寺前に開設。仏教との縁を深めることになりました。
2002年から、地元商店街や縁日の振興に役立ちたいとの思いで、仏教コラム「弘法さんかわら版」を書き始めた大塚さん。住職の話を聞いたり文献調査をしたりしてコラムを書き続けるうちに、「仏教が趣味」と公言するまでになったといいます。最近では文化センターの仏教講座の講師を務めるなど活動の幅を広げています。
大塚さんは「経済が安定していた時期と違い、今は社会の変化が激しく、心が休まることのない時代。心の安らぎを求めてかどうかわかりませんが、多くの人が御朱印ブームで寺社仏閣を訪ね、仏教や神道に興味を持つきっかけになったのでは」と話していました。
|愛知四国霊場でまちの魅力再発見!
仏教に詳しい大塚さんの著書『愛知四国霊場の旅』では、四国八十八ヶ所霊場を模した写し霊場の「知多四国」と「三河新四国」を紹介。いずれもお大師様の足跡が語り継がれています。
主な内容は以下のとおりです。
【主な内容】
第1章/仏教史、寺院史、遍路史を概観しつつ、本四国と写し霊場が誕生し、人々に浸透していった歴史を旅します。
第2章/名古屋に奉遷されたご真骨(仏舎利)。日泰寺が創建され、覚王山八十八ヶ所霊場が開創された歴史を旅します。
第3章/1825年、亮山阿闍梨(あじゃり)と岡戸半蔵、武田安兵衛という二人の行者が開創した知多四国の歴史と札所を旅します。
第4章/1626年、浦野上人が開創した日本最古の本四国写し霊場。復活した三河新四国の歴史と札所を旅します。
第5章/尾張と三河に国分寺・国分尼寺が開創され、「写し霊場の宝庫」となった愛知県の仏教史、寺院史を旅します。
※覚王山八十八ヶ所霊場マップ/知多四国霊場マップ/三河新四国霊場マップで、地理的関係も確認できます。
大塚さんは「注目が高まる寺院巡りですが、愛知県が日本で一番寺院数が多いということは実はあまり知られていないんです。理由は本を読んで確認してください」と『愛知四国霊場の旅』を読むよう勧めています。
仏教の基本は①諸行無常(しょぎょうむじょう=全てのものは常に変化し、永久不変なものはない)、②諸法無我(しょほうむが=全てのものは思い通りにならない)、③涅槃寂静(ねはんじゃくじょう=煩悩や迷いがなくなった悟りの世界、静かな安らぎの境地)の3つ。仏教の魅力について大塚さんは「人としていかに生きるべきか教えてくれます。政治や経済を考える上でも示唆に富みます。若い人など生きる手掛かりを見つけるきっかけになれば」と力を込めます。
コロナ禍で遠出を控えたい人も、本を片手に県内の寺院を辿るお遍路の旅を楽しみ、まちの魅力を再発見してみてはいかが。
▼大塚耕平さん
1959年名古屋市生まれ。仏教コラムニスト。中日文化センター仏教講座の講師を務めるほか、各地の先達会や宗派の教育機関・研究機関などで講演を重ねている。早稲田大学卒業、同大学院博士課程修了(学術博士)。日本銀行を経て参議院議員。元内閣府副大臣・厚生労働副大臣。現在、早稲田大学客員教授、藤田医科大学客員教授。愛知県バレーボール協会会長。著書に『弘法大師の生涯と覚王山』『仏教通史』『四国霊場と般若心経』(大法輪閣)。
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