歴史と文化の残る女城主の里「恵那・岩村」

少し遠出がしたくなる暖かな季節。歴史と自然を感じられる岐阜県恵那市岩村へドライブしてみませんか。来週から始まる朝ドラ「半分、青い。」のロケ地としても盛り上がっていますよ。

江戸時代からつづく計画都市

恵那市街地から南へ車で約15分の岩村町は、日本一高い標高(717m)に作られた岩村城の跡地があり、ふもとの城下町には、当時の歴史と文化が残っています。

岩村城の北に構えていた町が武田軍の攻勢で焼失し、約400年前、岩村川の左岸に新たに作られたのが現在の城下町です。岩村城に近い旧上町(現在の本町1丁目、2丁目)と呼ばれる地域には多くの職人が、さらに少し離れた中町に商人が住んでいたといいます。天正疎水(てんしょうそすい)と呼ばれる水路がつくられ、家の軒下や中庭に通して生活用水として使うなど、計画都市として発達していた地域でもあります。

江戸時代の建物が52軒、明治が27軒と、当時の姿を色濃く残す岩村の城下町は、1998年に岐阜県で3番目となる重要伝統的建造物群保存地区に選定。2013年に城下町の東西をはしる本通り約1.3kmが電柱の地中化で整備され、風情がいっそう増しました。

城下町には旧家が5軒あり、全て見学可能。江戸末期から材木や米を扱う商家「勝川家」の離れ座敷には、岩村城廃城によって受け継がれたヒノキ(廊下の梁)や屋久杉(天井板)が配されており、歴女や建物マニアも見惚れる造りになっています。庭の一角には、天正疎水の名残を見ることもできるので、ぜひ訪れてみて。

 

元祖・カステーラの味を守り継ぐ

岩村名物の一つが「カステーラ」。いわゆるカステラのことです。今から220余年前、岩村藩の医者が長崎でオランダ人から製法を学び、町民に広めたのが始まりです。当時、卵と砂糖が貴重だったことから、城の献上品として作られていました。

1789年創業「松浦軒本店」の「カステーラ(480円)」は、当時の製法と材料を受け継いで作られています。昔のレシピのまま、ハチミツを使っているのも特徴です。

製造工程もシンプル。石臼で材料を混ぜ合わせ、銅型に生地を流し込み、「MATSURA」の文字が入ったふたをして焼くこと約15分。パウンドケーキのような形のカステーラができあがります。1本ずつ焼いているため香ばしく、甘さがしっかり効いていて、ホッとするような懐かしい味です。

現在主流なのは、大きな型に生地を流し込んで後から切り分ける製法。一つ一つ流し込んで、という原型の製法で作っているのは世界的にみても岩村だけ。価格も「おやつ感覚」で、子どもからお年寄りまで幅広く愛されています。

 

「気候によって焼きあがりが変わりますが、職人が生地の配分や焼き時間を調整しています。長年の経験があるからできる」と話すのは8代目の松浦陽平さん。「カステーラが有名ですが、私たちは和菓子屋として地元の人に来てもらうことを一番大事にしています」と和菓子屋としての志も語っていました。お土産として、そして町の人の日常に寄り添う店として、今日も伝統の味をつないでいます。

▼松浦軒本店

場所/岐阜県恵那市岩村町本町3-246
営業時間/8:30~19:30
定休日/年中無休
TEL/0573-43-2541 FAX/0573-43-2594

※全国通信販売も可能

 

旧暦で祝うおひなさま

岐阜県東濃地方の一部では、旧暦でひな祭りを祝う風習があり、岩村でも4月3日(火)まで「いわむら城下町のひなまつり」が開催されています。

当初は、それぞれの家にあるひな飾りを出していましたが、祭りの存在を知った県内外の人からの寄付が相次ぎ、現在では約3,500体のひな人形が城下町を飾るように。今はあまりにも増えてしまったため寄付を受け付けていませんが、ひな飾りを大事にする思いが詰まった祭りでもあります。


金物屋の店先に飾られるひな人形


見上げると、2階にもひな飾りが!

布小物店の「あしざわや」(西町794-3)には、天保4年(1834年)の貴重なひな段が飾られています。顔や年齢の違いまで細かく表現された人形たち。訪れた際には、あしざわやの奥様、百合子さんの心温まる東濃弁とお茶のおもてなしを味わうことも忘れずに。

この時期には、岩村のひな菓子「からすみ」が町のあちこちで売られています。米粉を練って、富士山型に成形されたお菓子ですが、家庭でも作られていて地元ではおなじみ。価格は、1本400円程度。子どもたちの成長を祝う郷土の味です。

 

春が「旬」の、岩村へ

4月2日から始まるNHKの朝ドラ「半分、青い。」のロケ地にも使われた岩村城下町。ヒロインの故郷として、昨年秋に城下町の一部を昭和の雰囲気あふれる「ふくろう商店街」に変身させて撮影されたそうです。

岩村を歩いてから朝ドラを見ると、ピンと来る場所も多いはず。ロケ地めぐりとして訪れる人も増えそうですね。

 

岩村は、名古屋市内から高速を使って車で1時間半ほど。今週末には恵那も桜が咲き始めます。城下町のひな祭りは4月3日(火)まで開催。4月22日(日)~5月6日(日)は、7年に一度だけ見られる1000体の黄金の仏様「いわむら石室千体佛御開帳」も。いまが「旬」ともいえる岩村。歴史と文化、春の訪れを感じるドライブにでかけてみませんか。

●城下町ホットいわむら
http://hot-iwamura.com/


▼取材協力

岩村町観光協会 加藤勝也
岩村観光ガイド 堀高久